お腹が出てくる~ネコの伝染性腹膜炎(FIP)2012年08月22日

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1週間ほど前からなんとなくお腹が出てきた6歳のロシアンブルーのニャンちゃん。元気はありますが食欲は少し落ちています

お腹の出てくる病気は幾つかあります

お腹の臓器の腫大(肝臓、脾臓、腎臓、子宮、消化器、腫瘍等)

お腹に液体が溜まる(漿液、血液、膿、乳糜)

お腹に気体が溜まる(消化器内ガス、臓器破損によるガス等)

脂肪によるもの(肥満)

検査をした結果、このニャンちゃんはお腹の中に液体が溜まるネコの伝染性腹膜炎(FIP)の可能性が濃厚でした。

この病気は猫コロナウイルスが原因です。このウイルスは非常に蔓延(多分50%以上)していますが、通常病原性が弱く、軽度の下痢を起こす程度です。しかし猫の体内で突然変異を起こすと、病原性の強いネコ伝染性腹膜炎ウイルスになります

突然変異を起こすきっかけは不明な部分が多く。免疫抑制を起こすFIV(猫免疫不全ウイルス)やFeLV(猫白血病ウイルス)などの感染や、ストレスが強く関与していると考えられています。コロナウイルスに感染し、突然変異が起こって発症するのは、感染猫の10%に満たないといわれていますが、発症するとほぼ100%が死に至る、致死率の高い病気です

症状は2つのタイプがあります

ウエットタイプ:腹膜炎を起こし、お腹に液体がたまって膨れてきます元気、食欲はなくなり、下痢や嘔吐を発症し、衰弱していきます。また、胸に液体が溜まると呼吸が苦しくなります。

ドライタイプ:腹膜炎は起こらず、腎臓や肝臓に硬いしこりができて機能障害がおこります。脳に病変が起こると神経症状が出ますし、眼に炎症が起こって濁ってくる場合もあります。

確実に期待できる治療方法は今のところなく、症状にあった対症療法が中心になります。症状が出てから亡くなるまで数週間~数ヶ月の経過があり、前日まで食欲があったのに突然亡くなることもあります。

残念ながら今回のニャンちゃんも治療の甲斐なく2ヶ月ほどで亡くなりました

予防はコロナウイルスに感染していない場合は、感染している可能性のあるニャンちゃんとの接触を避けること。感染している場合でも発症しなければ普通の生活が送れます。抵抗力を落とすようなFIVやFeLVに感染させない(外に出さない)等ストレスを与えない生活が大切です

 

 

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